この世界の決まり
- 1
月がかわる
一年は十二か月。月がかわるたびに、一つの動詞が世界から失われます。
- 2
働きが止まっていく
その動詞が表す働きは、月のはじめにはまだ残っていますが、月末に近づくほど止まります。順番は毎年同じです。
- 3
暮らしがかわる
だから人々は、仕事も予定も月ごとに組みかえて暮らしています。
十二の欠け月
ことばがひとつ欠けているので、十二の「欠け月」と呼んでいます。その月に消えることばと、暮らしに起きることを並べました。
01
一月
終える
何も死ねない。契約が切れず、火が消えない。
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02
二月
隔てる
錠・壁・皮膚・国境などの境界が曖昧になる。
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03
三月
呼ぶ
名前が相手に届かない。
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04
四月
引く
重力と執着が軽くなる。
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05
五月
積もる
記憶・貯蓄・雪などが積もらない。
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06
六月
眠る
誰も眠れず、夢が路上に漏れる。
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07
七月
流れる
川・交易・噂が止まる。
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08
八月
燃える
火・熱・発酵・情熱が始まらない。
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09
九月
実る
成長・治癒・妊娠・醸成が止まる。
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10
十月
映す
鏡像・記録・真偽の検証が働かない。
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11
十一月
廻る
車輪・循環・物流が止まる。
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12
十二月
還る
出た者が帰れない。
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月番とは
消えたことばの代わりを、ひとりで引き受ける人がいる。
主人公は、その月に失われた動詞の代役を、世界でただひとり務める月番(つきばん)。一月には彼だけが終わらせることができ、三月には彼だけが人の名を呼べる。その力の代償として、彼はひと月ごとに「あるもの」を失う。
この世界
欠けの深さは、年によって変わる
どの月にどの動詞が失われるかは毎年同じで、暦として出版されています。変わるのは、どれくらい深く欠けるかです。欠け予報士が、天気予報のようにその年の深さを予測します。
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