03

三月

この月に消えることば

呼ぶ

名前が相手に届かない。

この月の暮らし

手話・紋章・色布、告白が成立しない月

三月に残された記録

01ひとこと記録

市では色布を振って店番を呼ぶ。慣れると、声より速い。

02欠け月生活記録

三月三日。上の子の名付けを、四月に延ばすことにした。三月につけても、名前は誰にも届かない。それでも呼びたくて、何度か口を動かしてみた。声は出ているのに、届いている感じがしない。妙なさびしさだった。夫が家の紋章を袖に縫いつけてくれた。名前の代わりだ。しばらくはこれで足りる。

03観測記録

観測地:西の港・荷揚げ場朔からの日数:十四日渋りの度合い:止まり観測事項:呼びかけによる合図が通らず、荷役の指示がすべて手ぶりに置き換わっている。書付は読めるが、宛先の判別ができない。暮らしへの影響:合図の取り違えにより積荷一件が落下。人身の被害なし。白暦院への具申:三月の荷役については、紋章による宛先表示を義務とされたい。

三月の記録を書く

この月の住人として、見たことを一行から書けます。

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